モスアイ加工サファイア基板(MPSS; 「Moth-eye Patterned Sapphire Substrate」)は、低コスト高効率LED向けに弊社が開発した次世代加工サファイア基板です。
モスアイ構造
1967年にスウェーデンの生理学者によって、蛾の目の表面にはサブミクロンスケールの周期的円錐構造が形成されていることが発見されました。この構造は「モスアイ(蛾の目)構造」と呼ばれ、この構造の表面に入射した光はほとんど反射しない特徴があります。
原理
弊社の創立者である上山教授(現取締役)は、このモスアイ構造を利用して、LED内で発生した光が外部に放出される前に内部反射を繰り返すことで発生する吸収損失の問題を解決する技術を初めて提案しました。
垂直方向化の効果
モスアイ構造表面に入射した光は、回折効果によってより垂直に近い方向に反射または透過する性質があります。
その結果、モスアイ構造を導入したLEDにおいては光がより垂直方向に強く放射される特徴があります。
配光特性
実際にMPSS上に作製したLEDと、従来のミクロンスケールの加工サファイア基板(PSS)上や未加工の平坦サファイア基板上に作製したLEDの配光特性について比較した結果を下の図に示しました。MPSS上のLEDはより垂直方向の指向性が強くなる特徴を有していることが判ります。
デバイス構造
MPSSはフェーズアップ構造にもフリップチップ構造にも適用可能です。
適用可能材料
弊社のモスアイ加工技術は、サファイア以外にもSiC、AlGaInP、GaN等様々な材料に適用可能です。
ウエハサイズ
弊社では、現在2、3、および4インチ径までのモスアイ加工が可能です。今後、6インチ径化も計画中です。
GaNエピコスト低減効果
MPSSでは、PSSに比べて基板表面の加工段差が数分の1程度と小さくなるため、その上に積層するGaN層の平坦化・高品質化に必要な膜厚を大幅に低減でき、大幅なエピコスト削減が可能となります。
アプリケーション
弊社のMPSSは、青色のみならず白色・黄色・赤色および緑色のあらゆる波長のLEDに適用可能です。
長所
MPSS技術の導入メリットは以下の通りです。
- 光取り出し効率の向上によるLEDの高効率化
- GaN層厚低減によるLEDの低コスト化
- 大口径基板使用時に問題となるウエーハの反り量低減
- 大口径基板使用時の波長均一性向上(高歩留り化)
- 大型LEDでも高効率化可能